マヤ神殿
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    CD−ROM
    『マヤ神殿とその壁面装飾』
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    コッズ・ポープ

     この建物は、その正面の壁全面があの長い鼻を巻き上げた雨の神チャクの石彫で埋め尽くされているために、マヤ語で"コッズ・ポープ(Codz-Pop)"、つまり"巻き上げられたマット(Rolled-up mat)"と呼ばれている。最初はどうも二階建てとして設計されたようであるが上の階は完成されず、その代わりに途中で屋根飾りが正面の壁に追加されたものと推定されている。

    二層の宮殿

     コッズ・ポープの北隣にある建物で、二層の宮殿(two-story palace)と呼ばれている。




    コッズ・ポープの前庭

     コッズ・ポープの前庭には、掘り井戸の跡や祭場跡と思われる石の囲いが見え、更にその周囲には、おそらくこのあたりから掘り出されたものであろう、その表面に様々な紋様を刻まれたおびただしい数の石材が並んでいる。

     石の囲いを形成している縦横40センチほどの岩石には、その全てにまだ判読可能と思われる神聖文字が刻まれていた。マヤの神聖文字は、象形文字の一種と看做されてはいるが、その解読は極めて難しく、石碑に刻まれた暦や人物の名前などがわずかに解読されている他は、その大半が今日も謎につつまれたままであるという。事実、マヤの神聖文字は、文字というよりも絵であり、その複雑さと怪奇さという点においては、とても実用的な目的で考案されたものとは思われない。つまり、それは、物事を人に伝えるための情報伝達手段というよりも逆に一部の階級がある情報を独占し、神聖化するための手段として、しかも、時には霊力を秘めた印として用いられたとも考えられる。

    では、その神聖文字は、何故、古代エジプトやメソポタミア、中国の例に見られるようなよりシンプルで実用的な文字として進化しなかったのだろうか。それは、多分、古代マヤ社会がそれを必要としなかったからということであろうか。実際、現在の私たちの生活を振り返ってみても、文字は必ずしも必須のものではないことに気付く。例えば、家庭や地域社会など小さな共同体にあっては、必ずしも文字を必要としない。産業社会にあっても農民や職人の間ではつい最近に至るまで文字はほとんど用いられていなかった。また、地球上で文字を駆使しているのは、現在でも極く限られた社会であることを知る時、文字文化とは何かを改めて考えさせられることになる。

     なお、マヤの神聖文字で書かれた基本史料としては、各地の碑文、壁画、コデックスと呼ばれる絵文書などがあるが、その内、コデックスについては、スペイン人による征服後、ユカタンの初代司教ディエゴ・デ・ランダによる焚書によってそのほとんどが焼失しており、オリジナルのコデックスとしては、現在、『ドレスデン・コデックス』、『マドリッド・コデックス』、『パリ・コデックス』と呼ばれる主として歴法、宗教儀礼などを記した三冊だけに限られているという。しかし、焚書の際には、一箇所に数百冊ものコデックスが所蔵されていたそうである。とすれば、ジャングルの中にはまだまだ他にも同じような絵文書が相当数埋れていてもおかしくはないだろう。ひょっとすると明日にでも、あの敦煌の時のようにどこかの遺跡の片隅からどっと絵文書の山がとび出してくるのも夢ではないかも知れない。


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