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 〈絵本の森〉物語 menu

更新日:2021年9月16日

1:ケーキパーティー

2:迷子の神様

3:じゅんすいなお話

4:童心の物語

5:森のお話、お話の森

6:神様の接近

7:記憶の輪、夢の行列

8:お話で哲学する


〈絵本の森〉物語


朗読・michiko
http://www.muse.or.jp/ehonnomori/profile/profile.html

4:童心の物語

ヒナのアルバと両親。
 今日も〈絵本の森〉のお話だよ。ボクと、リリーとヨシは、おはなしの森はじゅんすいで、風や水や火や土、〈四大〉っていわれるいのちの世界の支えとどっかで関係している、そのことをまず確認した。これが先月までだね。忘れた人は第三話までのコーナーでちょっとたしかめるといいよ。
 ヨシはいつも、〈じゅんすいなお話は、童心の物語でなければいけない〉って、そう自分に言い聞かせてるみたい。四大に関係したいのちの物語は、子供がはじめて世界を見るような、そういう見方が必要だっていう意味らしいよ。これはボクたちのあいだでもちょっとした議論の種になってた。だってお話には子供だけじゃなくて、大人とかお年寄りとかもとうぜん登場するでしょ。たとえばボクが「アホウ」と言われて落ち込んでた話をしたよね。子供のころのボクのお話だけど、ウミガメのおじいさんが、それでいいんだよって教えてくれて、ボクもああそうかって思った、そういうお話だからね。おじいさんはぜったいに必要な人だった。
 ただ……なんとなくだけど、お空の風や水やお日様の火や陸地の土、それに最初に触れたとき、ぼくたちはびっくりしたような、うれしいような感じになる。その感じは、こうして若鳥になったボクのこころの底にもいつも残ってる。海を見ても、いま目の前にあるあたりまえの海に、最初に海を見たときの、うれしいような、ちょっとこわいような、びっくりした感じ、それがだぶってるみたいな……そのことをヨシは言ってるのかなってちょっと思った。それでね、〈質問コーナー〉もここまできたから、思い切ってこの二重の感じみたいなのを言ってみたんだよ。それが童心かなって思ったりするって。そしたらリリーも賛成してくれた。
 「そうね、子供のころって、なんかいっつも毎日が新しくて、びっくりすることの連続だった。そしていまもそういう感じ残ってる。ま、まだわたしが子供だからかもしれないけど……」
 ヨシはにっこり笑ってうなずくと、フォルダーケースから絵をまた一枚取りだして、あの母子クマの絵の下に貼った。あれっと思った。ボクの絵かな(挿絵9)……
 「そうだよ。アルバの子供のころの話を聞いて描いたんだ。だいたいこんな感じだよね?」
 「うん、こういう感じ。すっごく幸せだった。」
 ボクはなんだかしんみりしちゃった。ヒナの最初のころは、お父さん(ガルっていう名前だよ)とお母さん(名前はガラ)がすっごくかわいがってくれて、もう毎日かわりばんこにおいしいお魚を持ってきてくれるし、「あれが海だよ、あれが島だよ、火山の神様がすんでらっしゃるんだよ」とかいろいろお話ししてくれて、とっても幸せだった……
 「そうね……でもこういう幸せって、長く続かないわね……」
 リリーがしんみりした口調で言う。ボクもそうだと思ったけど……リリーがちょっとかわいそうだった。ボクはふつうに巣立ちした子だ。でもリリーは子供のころに一家離散っていうか……大きな蛇に襲われて、お母さんもお父さんもリリーを救おうとして犠牲になったみたい(はっきりとしたことはわからなかったらしいけどね)。で、孤児になって泣いてたリリーをひろって育ててくれたのが、獣医のおじいさんだったんだ。ヨシもこのことは知ってる(そのおじいさんはもう亡くなったけど、ヨシのおともだちだったんだ)。ヨシはちょっとリリーを見て、こう言った。
 「みんな苦労して大人になっていくからね。だからヒナや子供がいっしょうけんめい食べて大きくなろうとするのは、すごく自然なことだよ……そして子供とはぐれる親や、親とはぐれてしまう子供も、これもとっても多いんだ。ボクたち人間もそうだよ。」
孤児のサンとマニ。菩薩面の門に向き合っている。
 ヨシはまた一枚絵をとりだした。あの仏様の絵にすごく似てるけど、仏様を見てるのはロラとロルじゃなくて、兄妹らしい子供たちだった(挿絵10)。
 「この子たちは、戦争で両親ともなくしてしまった子供たちなんだ。戦災孤児っていうんだけどね。こういう遺跡がたくさんあるカンボジアは、最近内戦がながく続いてね。こういう不幸な子供たちがたくさん生まれた……でもね、安心していいところもあるよ。みんないっしょうけんめい大人になろうとしてがんばってた。そしてちゃんと大人になって、しあわせな家庭を持った子供たちも多いんだ。」
 ボクたちは、内戦とか内乱とか、そういう風なことを時々聞いてたから、かわいそうだけど、でもよかったなって思ったよ。この兄妹がすごく近くに思えたっていうか……そういう感じ。リリーもしんみり絵を見てた。ヨシは、じつはこの仏様の元になった(仏様の顔をしていて、そしてこういう立派な門をたくさん建てた)ジャヤヴァルマンって王様の時代にも、たくさん戦争や内乱があって、そういう孤児がたくさん生まれてたはずだって言った。
 「だからね、国をしっかりおさめて、運河や灌漑水路をつくって民草の生活を安楽にしようって固い決心をされたんだよ。その王様が菩薩様になって、いまの時代の孤児たちを優しく見守ってる……こういうのが人間の〈文化風景〉の一番いいところかなってボクは思ったりするんだ。」
 そうか……つながってるけど、でもちがうところもあるってわかってきた。ボクたち生き物は苦労して大人になる、孤児にもなる、それはキミたち人間と同じところがあるけど、でも内乱とか戦争とかはないもんね……
 「そう、それが人間と生き物のちがいだね。おなじルーツで、でもちがっていってしまったんだよ。だからね、ボクたち人間は、ルーツにもどるひつようがある。同じ生き物だっていうことをくりかえし学ぶ必要がある。そのためのだいじな手段があるんだけど、それは?なんだろう?」
 リリーがお手々をあげた。
 「はーい、わかります、じゅんすいな童心のものがたり、でーす。」
ヒナのアルバとおとなりの子。
 こう言ってキキキッて笑う。あまりじゅんすいじゃないけど、でもかわいい子供の笑い。ボクも笑ったよ。ヨシも笑ってうなずいた。それからまた一枚、さっきのボクの「幸せな時代」に並べた。またボクの絵だよ(挿絵11)。
 「これはヒナが、そろそろとなりの子を気にし出すころだね。まず親鳥の行き来がまれになって、一人の時間が多くなる。それで、周りのことをゆっくり観察しはじめるんだね。するととなりに自分と同じ姿の子がいることに気がついて、おつきあいがはじまる。」
 そうなんだ。ボクたちアホウドリは、南の島で育つんだけど、からだが大きくなると、お父さんお母さんは、また北の海に行ってしまうんだ。それが親子の別れ。悲しいところもあるけど、仕方ないところもある。だってお父さんもお母さんもそうやっていのちをつないでいくしかないわけだからね。南の海はあんぜんだけど、食べ物になるお魚はそんなに多くないんだ。で、北に行くわけ。でもボクたちはのんきっていうか(アホウドリのせいしつかもしれないね)、ああ一人になったな、じゃ一人でやっていかなくちゃって、そう思うくらい。父さん母さんのことはしっかりおぼえてるしね。いつもそばに気配を感じてるから、そんなにさびしくないんだ……そして勉強がはじまる。ほんとうの勉強。世界をじっと見て、自分がどういう自分かってことをまなんでいく……まあ、キミたちと、きほんは同じだと思うよ……
 「そう、基本は同じだよ。ほら、そのころのアルバはこういう風だった……と、思う。」
ヒナのアルバ。世界と向き合いはじめた目。
 ヨシはまた一枚絵を出して、ボクたちの前に置いた(挿絵12)(もうディスプレイはいっぱいになっちゃってて、貼る場所がなかったんだ)。
 「うん、たしかにこんな感じ。」
 たしかにこんな感じで、お父さんお母さんがいなくなって、これからどうするんだろうボクはって考えてたよ。そう考えながら、海を見て、島を見て、お空を見て、草原を見て、そしてお日様を見てた……
 「ふうん、けっこうイケメンだったんだ。アホウドリのヒナとしては、ってことだけど。」
 リリーはキキキッて笑った。それから真顔でこう言ってくれた。
 「でも感じでてるね。たしかに自分と世界のことをしっかり考えはじめた、そういうのがわかるお目々してる。ああ、わたしもきっとかわいい子リスで、巣穴からこうやって森を見てたんだわ。かわいくて、かわいそうなわたし……」
 リリーはちょっと上を見て、お手々をあわせたりするんで、なんだかおかしかったよ。
 「それからね、しっかり育って、いよいよ世界へはばたく。こういう感じかな。」
アルバの巣立ち。
 ヨシはまた絵を見せてくれる。ボクの巣立ちの絵だよ(挿絵13)
 「そうね、みんな大人になっていく。巣立ちってすごく大切な区切りよね。」
 リリーはこう言いながら、またポリポリってアーモンドをかじる。それからぴちゃぴちゃ音をさせて岩清水を飲み飲み、ヨシをチラっと見た。
 「ヨシ、なんかゆうどうじんもんっていうか、わたしたちにこくはくさせたいんでしょ。童心をもって、世界を見る、そうするとこうやってアルバみたいに大空にはばたいたり、わたしみたいに森を駆け回ったりできるんだよって。」
 「まあ……そういうとこかもしれないね。」
 ヨシは笑いながら頭をかいた。なるほど、そうかって思ったよ。じゅんすいな物語は四大の物語で、そしてそれを「もろに」感じるのは、たしかに大空にはばたいたり、森にはじめて出て行く、そういう「巣立ち」の日だもんね。するとちょっとあたまがろんりてきに動くところがあるよ……こうヨシに言ってみた。
 「じゃあ……そういう最初の日のことをずうっとおぼえておく、そのためにじゅんすいなお話があるんだね。お空とお水と火と土のお話……でもそれはなんのため? 大人になるためだったら、もうなっちゃうわけでしょ。それは、さいしょのスタートの日をはっきりおぼえてるから、すごくしんせんな気持ちにもどったりできるけど……それってこじんてきなことだし……」
 ボクはちょっとこんらんした。それはね、ヨシがもう一つ、〈童心は仲間を見つける、そして童心共同体をつくる〉っていうことをどっかで言っていて、それがみょうに記憶に残ってたからだと思う。すぐリリーも賛成してくれた。
 「そう、わたしも、そういう思い出って大切にしたいけど、それはすごくわたしに関係したことで、だから……ひとりっきりになる時の支えみたいなものかなって思ったりする。でもヨシは、それが仲間をつくるげんりだよって言うでしょ。それがいまいちわからなかったりするの。」
 「そうだよね、それがへいきんてきな、登場生き物とどくしゃのかんかくだよね。」
 ボクは、じぶんの今のお勤め、〈絵本の森〉のナビゲータのお勤めに関係してきたなって感じて、なんだかうれしかったよ。で、〈右代表〉としてこう言ってみたんだ。ヨシはうなずいた。
 「そうだよ。すごくこじんてき、いちばんこじんてきって言っていいくらいのことだよ。童心が世界とさいしょにふれあう、じゅんすいに四大そのもののすがたに目をみはる、それはもう生きる支えそのものになる。でも大人になると、普通に生活ができるから、だんだんにそういうことは忘れていく、こころのずうっと底に沈んでいく。それがね、ごく普通だよ。ボクもそうだったし、リリーもそうなる。アルバもずうっと大人になっていったらそうなったと思う。でもね、仲間を見つけることはとてもたいせつで、そしていつもこの〈はじめて世界を見た日〉に関係してる。そしてそれを思い出せば、仲間はそこにいる……まずそのことから話そうかな。」
 ヨシはまた絵を一枚見せてくれた。アマガエルの子の絵(挿絵14)。すぐリリーが歓声をあげた。
アマガエルのアマオ。
 「わあ、かわいい。」
 それからヨシをまたチラと見た。
 「あ、またゆうどうじんもんだ。この子に見おぼえありませんか、どっかのだれかと似てませんか、とか。」
 ヨシは笑ってうなずいた。
 「そうだよ。さっきのアルバ、一羽になって世界を見てるアルバ、そして巣穴から森をはじめて見たころのリリーだね。」
 「その先はわかった……と思う。つまり、こうしてかわいいって思うだけじゃなくて、わたしもこのくらいかわいかった、かな、とか思う。それが〈仲間を見つける〉ってことなのね。」
 「その通りだよ。ね、このアマオ君も(そういう名前の子だよ)ようやくオタマジャクシからカエルになって、木にのぼり、森をみてびっくりして、ちょっとふあんで、でもうれしくてたまらない。それはすごくこじんてきなことでしょ。でもどうしてかわかりあえる、そういうこじんてきなことなんだよ。だからやっぱり仲間なんだ。」
 ヨシは調子が出てきたみたい。また一枚絵を見せてくれる(挿絵15)。きょうは大サービスの日だね。
カワセミのカワオ。
 「これはカワセミのカワオ君だよ。若者でちょうどアルバくらいかな。朝方餌場で食事をすませたところだろうね。ちょっとぼんやりして周りを見てる。何か感じない?」
 「なんか……自分を忘れてるみたいな感じだね。すごくいい感じ。世界をぼんやり見てる、みたいな……」
 ここまでボクが言ってみて、あ、そうかって思った……
 「あ、そうか。こういう目は巣立ちの日の目だね。自分の力を信じて、そして自分を忘れて、世界の中にはばたいていったよ。ボク、はっきりおぼえてる。」
 「そう、わたしもおぼえてる。おじいさんが、森はこわくないよ、ともだちだよって教えてくれて……こわさをわすれて、こわがってる自分もわすれて、おもいきって森の中に入っていった……父さんと母さんの入っていった森に……」
 リリーもしんみりしてる。そのリリーのお目々が、なんだか巣立ちの日の目なんでおかしくなったら、リリーもキキキッて笑ってボクを見た。
 「なによ、そのお目々。せっかくさっそうとした巣立ちの日のおめめが、ごくふつうのアルバのお目々にもどっちゃった。」
 「そうだね。そういうリリーもそうだよ。」
 ボクたちは笑った。で、笑いながら、ヨシの「ゆうどうじんもん」の方向もだいたいわかったよ。つまり……童心は、特に巣立ちの時の自分をわすれる感じは一生残る、残るけど普通は隠れていく、隠れていくけど、ふっとまたアマオやカワオ、そしてリリーのお目々にそれを見つけて、ああいいな、仲間だなって思う、そういうことかなって感じた……
 「たしかにそうよね。そういう巣立ちの日の目っていうの、そういうのをお友だちの目に見ると、こじんてきで、すっごく……みんな、みたいな感じ。よく言えないけど……」
 「そのよく言えないことをね、言おう言おうとすると、いよいよお話が始まるんだよ。」
 ヨシがこう言ったんで、またぱっとひらめいたよ。ああ、そうか、ヨシのお話におともだちがたくさん登場するのは、そういう意味なんだ。童心をみとめあうっていうか、もうみとめあってるっていうか、そういう仲間たち……
 「そう、たとえばキミとリリーもそうだね。」
 ヨシが先を続けてくれた。それからまた新しい言葉を教えてくれた。ちょっと難しいけど、ネオテニーっていうことば。子供がそのまま大人になるっていうくらいの意味だって。
 「それはね、とてもたいせつな〈進化のしくみ〉なんだよ。いまのおんだんかもそうだけど、火山が噴火したり、大地震がきたりすると、森や山はひとまずほろびてしまうくらいにめちゃくちゃになる。でもね、それは地球のしくみ、四大のしくみでもあるんだ。そうやって大きな動きがあると、いろいろなことが同時におきて、それがけっきょく次の森や山の栄えを準備したりもするんだよ。」
 ヨシは説明を続けてくれた。これはボクたちもずっと感じてることで、一見平和に見える静かな海だって、大荒れになることもある。いまは細い煙があがってるだけの火山島だって、大噴火をしてあたり一面が火の海になることもある。そういう大きなできごとは、でんせつとかしんわになってずっとあとまでつたわっていく。それはキミたち人間もボクたち生き物も同じだと思うよ。で、ネオテニーとか童心の仲間たちとかいうのは、やっぱりそういう〈大破局〉の時にすごく大事になるんだって……
 「つまりね、そういう破局のあとの森や川、海や山はまったく新しい顔をしていて、どこにももうこれまで学んだことが使えそうにないんだよ。群れの常識、種の常識みたいなものは、ずうっと何千年も何万年も続くことがある。でも突然新しいかんきょうがうまれると、みんなすごくとまどうことになる。たとえば大噴火のあとに荒れ果てた森にもどってきた生き物とかだね。おんだんかでどんどん海水面が上昇しているいまの地球も、それににてるんだよ。そういう時にはね、初心にもどることがすごく大切なんだ。」
 「初心にもどる……つまり……つまり巣立ちのこころ?」
 リリーは正解をいいあてたみたい。ヨシは大きくうなずいた。
 「そうなんだ。世界をはじめて見た時のこころ、それが巣立ちのこころだったよね。でもその世界は、お父さんお母さんの知ってる世界でもあった。だから教えてくれたことが役に立つんだけど、でも一人で立ち向かうしかないだろう? 森にはじめて入るのはリリー自身だし、海にはじめて飛び立つのはアルバ自身だからね。
 ね、わかるように、破局のあと、破局のただなかには、群れの全体、生き物の全体がそういうあたらしい世界に向き合うんだよ。だから群れ全体が、生き物の全体が初心にもどり、童心にもどって、あたかも世界をはじめてみるようなこころもちで、どんどん先に行く必要がある。必要があった。そうやってボクたち生き物は、ずうっとここまでやってきたんだ。」
 「なんか……わくわくするね。そりゃたいへんだってわかるけど、みんなで先に先に行くのって楽しいでしょ。」
 ボクが思ったとおりを言うと、リリーは笑った。
クラとホシとマル。
カモシカのおじいさんとの出会い。
 「あ、それ、ヨシのお話ににてるね。たいへんなとこもあるけど、みんなで行けばこわくない、みたいな。わたし、クラちゃんたちの冒険、なんかすごく好きだな。あれも火山と関係してたでしょ。」
 ああ、そうだったとボクも思いだしたよ。破局を超えていく、童心の仲間のおはなし、チングルマのクラとホシガラスのホシとマルハナバチのマルが、「約束の楽園」を探そうとするあのお話(『クラとホシとマル』だよ)、あれはたしかにそういう「仲間でたちむかう巣立ち」みたいな話だったからね。
 で、さいごにそのお話の絵をまたヨシから見せてもらったよ。三人がなかよくその楽園に向かっていく場面(挿絵16)。なんだかわくわくして、でもこれから大変なことがはじまりそうな、そういうちょっとこわいみたいな感じもある。でも冒険ってそういうもんだよね。ボクたち生き物はずっと冒険してここまでやってきた。それが〈進化〉のけつろんみたいだよ。
 じゃあ来月は、いよいよそうやって広がってきた森の話になるみたいだね。そしてどうして森のお話も、また森みたいになっていくかっていう、そういうお話。楽しみにしててね。



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