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 ロラとロルの神様さがし menu

更新日:2023年10月28日
       (最終回)


1: 神様の国なのに、
   どうして神様がいないの?


2:神様さがしのはじまり

3:鳴き声

4: いつもしずかに笑っている

5:お墓と御神体

6: 見えていて、見えてない

7: ふりむかないあいだは、
         そこにいる


8:古い神様と新しい神様

9:森の神様、森が神様

10:神様はどこにでもいるよ

11:温暖化と寒冷化

12: そこにいるけど、
       どこにもいない


13:団地の子育て

14:巣立ちのすがすがしさ

15:森と山の通い路

16:森のいぶきと子供たち

17:名代の木

18: アップルパイ・
         パーティー


19: 森と山と川をつなぐもの

20: ボクたちを包む神々しさ

21:生き物だけの進化

22:宇宙の〈四大〉

23:場所とそれをこわす力

24:内なる四大、内なる神様

25:護られて、護る


ロラとロルの神様さがし
――前篇:聞き取り調査――


朗読・michiko

4:いつもしずかに笑っている

  ホシガラスのホシ君は、その山にいくつか大好物のハイマツの「あなば」を持っていました。その一つは、ホシ君がお日様と向こうの山になにかのお祈りをしていた、あのススキの原のすぐ上にあったのです。
 「まずこうしておいしそうな実をつまんでね、それを木の割れ目とかに押しつけるんだ。」
 ハイマツの枝にとまったホシは、すぐつやつやした茶色の実を「まつぼっくり」から選んで、しっかりとりっぱな爪足で押さえつけました。すぐ向かいの梢には、キビタキのキビオがとまって、「見よう見まねで」同じ事をしています。ひかりのこどもたちも、いまはキビオの横の枝に腰掛けています。キビオが木の割れ目を見つけて、そこにハイマツの実を押し込んだのをたしかめたホシは、こう続けます。
 「これからがちょっとコツがいるんだ。まずクチバシで押しつけるようにして、小さな穴をあける。慣れるとすぐだけど、最初は難しいかもしれない。よく見てて。」
 ホシは実のひらたいところの中心を、コンコンと音をさせてクチバシでたたきました。まだ穴は開いてません。
 「ほら、すこし響くところがあるでしょ。そこがねらいどころなんだ。見つけたらね、くちばしをすぼめて、いっぽんの針みたいにして、力一杯たたく、こういう風だよ。」
 ホシはこんどは大きく首をのけぞらせて、ギュッとかみしめたクチバシを振り下ろしました。ちょうど道路を工事する人が、つるはしやなにかを力一杯ふるうような、そういう感じです。ポコッと小さな音がしました。穴があいたようです。
 「次にね、この穴にクチバシの先を押し込んで、皮をむいていくんだよ。」
 ホシはクチバシの先を器用に使って、皮をむいていきます。あとには白くつやつやしたおいしそうな実だけが残りました。
 
ハイマツの実の皮をむくホシ
「じゃ、やってみるよ。はじめてなんでうまくいかないと思うけど……」
 キビオは習ったばかりのことを「じっせん」します。もともととても器用なたちなので、コツはもうつかんでいたようです。ただ力が少し足りないので、最初の穴開けのところで苦労しました。でも、「音がだいじ、音を聞いてポイントをさがしてごらん」と言うホシのアドヴァイスが、「つぼをえて」いたようで、何度目かに成功しました。皮むきはとてもスムーズです。わりとすぐ、白い実だけになりました。
 「へえ、わりと簡単だね、わあ、いい香りだ。」
 たしかにその「こくのある山と森の香り」は、見ているロラたちのところまで漂ってきました。
 「はい、じゃあこれがキミたちの分だよ。」
 キビオの苦戦のあいだに、ホシは二つの実をむきおわって、ロラとロルの前に置きました。それから自分の分もあっという間に用意したのです。こうして仲良くお食事が始まりました。「おかわり」ももちろんあります。キビオは夢中になって、五つ食べました。ホシは一つだけ多く、六つです。ロラとロルもおかわりを勧められましたが、「これでいいよ、おなかいっぱい」と言って、おさがりはキビオとホシにあげました。これで六つと七つになったわけです。
 あ、ちょっと注意しておきますと、ロラとロルもお食事はもちろんします。それは「おさがり」という言葉でわかるように、お祭りの時に神様にお餅をそなえたり、もっと身近には仏壇にみかんやお菓子をお供えしたりするのとだいたい同じです。つまり「精気」を楽しんでもらうのです。舌が敏感な人なら、仏壇の「おさがり」のみかんと、いきなり食べるみかんは、その味わいがはっきり違うことがわかるはずです。たんに「日にちが経ってるからだ」とあっさり言ってしまう大人もいますが、そういう大人はだいたい「信仰心」が欠けていますから、あまり信用しないようにしましょう。自分の舌を信じて、違いがわかれば、その違いが、つまりは神様が、あるいは亡くなったおじいさん、おばあさんが先にいただいた「精気」だというわけです。物質プラス精気マイナス精気、イコール物質だけでいまいちの味わい……まあ簡単な引き算と言えるでしょう。
 それでロラ、ロルも精気を食べているのですが、これはちょっと特殊な精気で、「光子発散型」と言います。難しい言葉ですが、でもせいかくに「最新の精霊学」で定義された言葉です。神様やおじいさん、おばあさんがいただく「精気」は、「物質発散型」と呼ばれています。つまりそれは物質がそのまま発する精気で、やはり物質の一部です。それに対して、ひかりのこどもたちは、ひかりをエネルギーとしていますから、物質そのままでは「食べられない」のです。それで物質をエネルギーにそのまま還元すると、それは核爆弾になってしまって、もう大変です。ところがこれは最新の科学研究が取り組んでいるのですが、どうやらわずかに、普通の物質は「光エネルギー」を発しているらしいのです。つまりまあ、同位体と同じ原理ですが……いまは省きましょう、ウィキに何かあるとおもいます。そちらを探して下さい。つまり……結論から言いますと、物質は光になるから見えるわけですが、その光になる時に、ごく一部が「光の精気」になると考えて下さい。その精気を、ロラもロルもいただいて楽しんでいるわけです。
 さて、こうして秋風にふかれながら、楽しい楽しいお食事が終わりますと、ロラとロルはいよいよ「本題」に入りました。
 「わたしたちがここいらの神様について〈聞きとり〉をはじめたって、さっきキビオが紹介してくれたでしょ。それで、ホシはさっきお日様に祈ってた。何を祈ってたの? そして何か見えたり聞こえたりした? ちょうじょうげんしょう、とかじゃないのよ。そんなのエンタメ向きだって知ってる。そうじゃなくて、しんこうしんの、そのないじつが知りたいわけ。」
 「おねえちゃん、ことばむずかしすぎるよ、ここは秋のお山だよ。”しゅうきのさんがくちたい”、じゃないよ。」
 ロラがこっそり注意しましたが、それはもうホシに聞こえてしまったようです。「クッ、クッ」とアマガエルに似た声で笑って、でもすぐ真顔になってこう聞き返しました。
 「そうか……しんこうしんか……ボクたちは小鳥さんだから、まず風においのりするよ。キビオもそうでしょ。」
 「そうだね。巣立ちの時とか、もう緊張して、そよ風さん、ボクをちゃんとのせてってねって、いのってた。全身がぶるぶるふるえたよ。」
キビオの巣立ち。風の神様に祈っている
  そのころの絵を紹介しておきましょう。キビオはヒナのころ、巣から落ちて怪我をして、しばらくわたしの山荘で暮らしたので、巣立ちも庭のアカマツの枝からだったのです。きょうだいもしんせきもいない、みなしごでしたから、見ているわたしもちょっと緊張したくらいです。でもけっきょくうまくいきました。いまはごぞんじのとおり、「つばさじまん」の子です。
 「ボクは崖からだった。すごく穏やかないい日で……お日様は優しいし、山並みもとってもきれいだった……あれっというくらいあっという間に飛べちゃったけど……でも風の神様、ありがとうってこころにつぶやいて、翼を三度、広げたり閉じたりしたよ……」
 「だいたい、そうするもんだよね。」
 キビオも賛成します。聞いていたロルは小首をかしげました。
風の神に祈って飛び立つ巣立ちの日のホシ
 「風に乗るわけだよね。つばさがくうきていこうをうむ。すべてりきがくとほうていしきだけど……でも神様はいる……いたの?」
 「いたよ……だって風が神様だもの。」
ホシがいうと、キビオも「そういうもんだよねえ、風の神様を信頼するから、ぽんと飛び立てるわけだし」とあたりまえのように言います。ロラとロルはでも……あんまりなっとくできなかったようです。こんどは「お日様に対するしんこう」のことを聞いてみようと思いました。
 「お日様とは、どういう関係? やっぱり……いのちのもとだから、すごく好きでしょ?」
 ロラが「きたいをこめて」こう聞きますと、ホシは「もちろんだよ」と言って、クッ、クッと調子をつけ、歌を歌いはじめました。

〈おひさまどこかな みえないな
 ぼくはどこかな みえないよ
 そよそよそよかぜ かおってる
 さわさわおはなも かおってる
 みんなだいすき きらきらおひさま
 おひさまだいすき はるののやま
 ぼくはここだよ みつけたよ〉

 「これは山でやるかくれんぼ。お日様をわざと見ないようにしてね、ぴょんと飛び出して、あ、みつけたっていうの。〈はるののやま〉をなつ、あき、ふゆに変えると〈つうねん〉でできるよ。キビオもやるよね?」
 「うん、おともだちからおそわった。ひとりでどこでも遊べるのがいいよね。」
 この遊びも、小鳥のあいだでは〈定番〉です。陽のあたるかあたらないところで、影に入ったり出たりしてる子は、だいたいこの遊びに熱中しているのです。いまのみなさんはどうかわかりませんが、わたしたち、〈せんごやけあとは〉と呼ばれた世代では、〈かごめかごめ〉の遊びとか、あるいは〈とうりゃんせ〉をやっていました。遊び時間のぜんぶがそれだったりしたのです。ですからまあ、そういう〈定番〉の一つなのでしょう。ホシ君の一人遊びの絵を描いてみましたので、お見せしておきます。
お日様と〈かくれんぼ〉をするホシ
 さて、山の場面にもどりますと、ロラとロルは顔を見合わせました。「この子たち、こどもね」と描いてあります。そういうロラたちも、子供そのものなのですが……子供は大人っぽいことに強くあこがれることがたまにあります。そしてそういう時は「子供っぽい子供」とのきょりが生じます。この時の二人がおそらくそうだたのでしょう。ロラはちょっと気取ってこう言いました。
 「お日様は優しいから、子供が大好き、それはわかる。だから遊びたくなる。それはわかる。でもしんこうには、しんけんさも必要、それはわかって。で、さっきホシが、しんけんな表情で、お日様に祈ってたのをもくげきしたの。わるかったけど、こっそり、たいせつな、そのいのりを目撃して、すごく興味を持った。それをちょっとだけ、教えてくれる? 何を祈ってたの?」
 ホシはああ、そうかという顔をしました。
 「祈ってたのはほんとだよ。でもお山に祈ってたの。」
 「でも……でも、最初はちがうでしょ。お日様をじっと見てたよ。」
 「そうだね。あの時もうキミたちいたんだ。そう、お日様に祈ったっていうか、おたずねしたんだ、こんな感じ。」
 ホシは少し節回しをつけて、こう歌いました。

〈おひさま おひさま いつもやさしい
 このあきの ほかほかおひさま ぼくはだいすき
 あきはたのしいみのりのきせつ そのみのりをおもうと
 もうおいしいもののやまもり なかでもいちばんおいしい
 あのすばらしいはいまつの ぴかぴか てらてら
 ぎっしりつまった かわいいこのみをおもうと そわそわわくわく
 すぐくるふゆはきびしいきせつ かなしいきせつ
 さむさでこごえてなくなるいきもの はるまでまてずにたおれるいきもの
 それもあたりまえのもりとやまのふうけいだけど
 でもそれがじぶんのことになると あたりまえではありません
 おとうさんは はいまつのみをふゆやまにたくわえる そのてんさいでした
 ぼくにも おかあさんにも それをおしえてくれました
 そしてふゆのさなか ぼくたちがこごえてうえていると
 じゃあとっときのおいしいみだよ といって 山からそのたくわえを
 もってきてくださった それなのに きょねんのふゆ 雪山でなだれに
 まきこまれ 死んでしまいました。
 それからおかあさんも、はるさきにとくべつのたくわえをとりにいって
 おおたかにおそわれて しんでしまいました。
 そのおかあさんは、しぬまえに、おとうさんはあのゆきやまにかえったんだよと
 そういいました わたしもしんだら あそこにかえるから そしていつも
 おまえをみているから なにもしんぱいしないでいいよと そういいました
 それでぼくは これからおまいりします やまのごしんたいにまもられた
 おとうさん おかあさんに あってきます
 ただきになるのは ぼくがおまいりをして そこにとうさんかあさんが
 ちゃんときてくださるかどうか それがきがかりで それがこわくて
 これまでおまいりできませんでした でももうむねはかなしみでひきさかれそう
 ぼくひとり しあわせにいきている そのことがたえがたいのです
 どうしてあんなにいいひとだった たくわえのてんさいだったおとうさん
 そしてやさしいおかあさん もういなくなってしまったのか
 それがわからないのです おひさま やさしいおひさま おこたえください
 おまいりにいって そこでおとうさん おかあさんにあえるのでしょうか
 あえないなら きっとぼくはしんでしまいます ふしんこうのまま
 もうせかいになにもよりどころもなく しんでぼうれいになります
 そうならないように おしえてください きっとたしかに おとうさん
 おかあさん そしてふたりをまもってくださるやまのかみさまが そこにみえる
 そのしるしをおしえてください〉

 「これがぼくの最初の祈りだよ。そくせきの、そっきょうだけどね。」
 ホシはちょっとてれたように笑いました。でもロラもロルもキビオも、とてもしんみりしたのです。キビオもみなしごなのです。おとうさん、おかあさんは山火事の時に亡くなってしまいました。ロラもロルも、宇宙の最初にお母さんのひかりをチラと見たように憶えているのですが、それ以来、宇宙を経巡っても、はっきりとお母さんだといえるひかり、優しく強いひかり、宇宙のぜんたいをだきしめるほどの大きなひかりには出会っていないのです(いまはお日様がそうではないかという、そういう「いちまつのきぼう」を持って、それで地球でしばらくすごすことにしたのです)。
 「そういうことって、あるよね。」
 キビオはふっとためいきをつきました。
 「ボクもおとうさん、おかあさんにすごく会いたかった。でもお日様に祈るっていうのはいいね。ボク、思いつかなかったよ。で……そのしるし、お日様教えてくれたの?」
 「うん……むりやりだけど……」
 ホシは思い出し笑いをして、またアマガエルのように「クッ、クッ」と笑います。そしてその「無理やり聞き出した答え」を教えてくれました。また節回しをつけて、こう歌ったのです。

〈おひさま おひさま やさしいおひさま
 おとうさんのようにちえがある おかあさんのようにやさしい あきのおひさま
 ぼくはおとうさんにききました どうしておとうさんのようになれるの
 なんでもしってて そしておしえてくれる そういうとりにぼくもなりたいな
 そうしたらおとうさん なにもこたえず ただやさしくほほえんだ
 ぼくはおかあさんにききました どうしておかあさんのような子をみつけるの
 やさしくて おいしいものをたくさんしってて おはなしをたくさんしてくれる
 そういう子といっしょになれるの おかあさんみたいな子をみつけたいな
 そうしたらおかあさん なにもこたえず ただやさしくほほえんだ
 それでぼくはしりました ちんもくも ほほえみにつつまれたら それは
 それはもう さいこうのこたえだって さいこうの そうだよ そのとおりだって
 だからぼくはわかったんです ぼくもやがてそんけいするおとうさんになれる
 ぼくもやがてやさしいおかあさんのような子と いっしょになれる
 かわいいこたちのちちおやにちゃんとなれるって
 ですからおひさま こたえてください ぼくはこれからおもいきって
 あのおやまにおいのりします いっておいのりします
 なつかしいおとうさん おかあさんにあわせてください
 さびしくてしかたないんです ちゃんとおとうさんおかあさんがあのおやまから
 いつもぼくをみまもってくれている そのしょうこがないなら
 ぼくはそのばでしんでしまいます ふしんこうにうたれてぼうれいになります
 こんなまよいをもって でもおいのりにでかけようとしています
 それでほんとうにいいのでしょうか おこたえください やさしいおひさま〉

 「こうお祈りしてお聞きしたんだ。」
 こうホシが言いますと、ロルが「ぴんときた」ようです。すぐこう言いました。
 「ぼく、わかったよ。それ、”ゆうどうじんもん”っていうんだよ。」
 「つまり……おひさまは、おとうさん、おかあさんとおなじで、だまってた。でもにこってほほえんでくれたのね。」
 ロラもとてもうれしくなりました。ホシは、「ね、いいアイデアでしょ」と胸をはります。キビオは……ひょっとしてこれは、秋のお日様がいつもやさしいことを「前もっておりこんだ」そういう聞き方かなと思いましたが、でもとてもいい思いつきだとは感じたのです。
 「ボクもでも、なんだかわかった気がするな。」
 キビオはなにか思い出したようです。
 「みなしごになってね、ようやく巣立ちはできて、森をはじめて歩き回ったんだ。飛ぶのはまだこわくて、時々にしてた。それでね、なんかすごくアットホームっていうか、いごこちがいい場所があって……倒木の影とか、谷川のそばの岩のくぼみとかだけど……そういうところにくるとね、ひとりごとをいつのまにか言ってたんだ。こういう風だよ。」
 こんどはキビオがふしまわしをつけて、小声で歌いました。

〈ここは あんぜん ここは たのしい
 ようやくみつけた ぼくのばしょ
 みんなのばしょで ぼくのばしょ
 ね そうでしょ はんたいしないよね
 はんたいしてもいいよ そしたらほかのところにいく
 ほらこうしてみみをかたむけて みんしゅしゅぎだよ
 だれでもいけんをいっていいんだよ ぼくがここでしばらく
 ほっとしてやすむ そのことにいぎあるひとは いるかな
 ああ、やっぱりだね みんなやさしいね だまってくれてる
 じゃ しばらくいることにするよ〉

森の倒木の上で耳をかたむけるキビオ
  「こう言ってね、〈さんどうをえて〉から、そこで水場をさがしたり、餌の木の実をさがしたりしたの。たいていはうまくいったよ。」
 「なんかそれ……さいしょからこたえ知ってるみたいな……」
 ロルはちょっとにやにやします。でもロラはいがいとなっとくがおでした。
 「それ、いいやりかただと思う。だって耳をかたむけて、なにか聞こえたら……たとえばオオタカとかハヤブサの鳴き声とかだけど、それだけで〈いぎあり〉ってことですものね。」
 「あ、そうか。耳をすます。あんぜんをかくにん。いぎなし。やっぱりかがくてきだね。」
 ロルもなっとくしたようです。
 「じゃあ……おやまにむかってお祈りしたら……声は聞こえた? それともぼんやり姿が見えた? おかあさん、おとうさんの姿と声……」
 ロラがすこしおずおずとこうホシに聞きます。いよいよ「核心部」の質問ですので、ちょっときんちょうしたのかもしれません。でもロルはげんきよく付け加えました。
 「それに神様だよ。山の神様。お顔が見えた? 声が聞こえた?」
 「うん……見えたような……聞こえたような……」
 ホシはちょっとどくとくの含み笑いをしました。それからあっさり、「ほんとうのわけ」を話してくれました。それはあっさりした、でも独特に深みもある真相だったかもしれません。
 あ、残念ながら、いつのまにか今月の予定分は埋まってしまったようです。
 次回は、このホシ君のお祈りのことからお話することにしましょう。


 



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